「初心忘るべからず」

誰もが聞いたことがある格言です。

「初めの志や純粋な気持ちを忘れずに、ひたむきに物事に取り組め」

そんな意味で使いますね。

しかし

最近、伝統芸能である「能」について書かれた本を読んで初めて知ったのですが、この言葉の本来の意味はそれとは異なり、もっと深い意味があったのです。

この記事では、「初心忘るべからず」の由来や本当の意味についてお伝えします。

「初心忘るべからず」は世阿弥の言葉

じつはこの言葉は、室町時代に能を大成させた世阿弥が語った言葉です。

世阿弥は芸談を記した著書を数多く残していますが、その中でたびたび「初心忘るべからず」と述べています。

つまりこの言葉は、能役者が芸を極めるために必要なことを表わしたものだったのです。

 

「初心忘るべからず」の本当の意味

世阿弥が言うところの「初心」とは、若いころの志、初々しい気持ちのことではありませんでした。

むしろ「初心」とは芸における未熟さのこと。

「初心忘るべからず」とは、「芸の未熟さを思い出し、精進せよ」という意味だったのです。

しかも、芸の未熟さと言っても若い頃の未熟さだけを言っているのではありません。

この言葉の深さはその点にあります。

 

忘れてはならない3つの「初心」

世阿弥が50代半ばに著した『花鏡』という本に次の一節があります。

是非の初心忘るべからず

時々の初心忘るべからず

老後の初心忘るべからず『花鏡』

1つめの「初心」は若いころの初心を表わしています。

しかしそれに続いて「時々の初心」「老後の初心」と言われているではありませんか。

若いときのみならず、人生のどの段階においても人は未熟さをもっているもの。

そしてそれは老後になっても変わりません。

大人になったからこそ、また老後になったからこそ直面する壁や試練があります。

その壁を乗り越えた経験は、その後の芸の向上に資するのです。

 

若いときに才能を開花させ、人から褒めそやされることがあるかもしれません。

あるいはもっと大人になって、自ら一人前になったと感じることもあるでしょう。

しかしそこで満足しては芸が止まってしまいます。

どれほど経験を積んでも、今の「初心(=未熟さ)」を忘れてはならないのです。

またもう1つの意味として、各段階での「初心」を思い出すことにより、当時の経験を芸に活かしていくことができるということもあるそうです。

とっても深い言葉ですね。

 

人生も芸と同じ

世阿弥は芸について語っていましたが、「初心忘るべからず」は人生そのものに当てはまります。

未熟だったころを思い出すと、身の引き締まる思いがします。

そして今現在も、新たな壁に直面する未熟者に過ぎないんですよね。

一方で、かつて未熟なりに努力して得たものは今でも価値があるはず。

そんなことを考えると、常に向上心を持ち続けることができそうです。

 

「初心忘るべからず」は、どんな物事にも当てはまる良い言葉ですね。

芸事はもちろん、受験勉強、会社経営、自分磨き・・・何をするにも大切なことです。

 

このブログも、この記事でようやく累計100記事となりました。

これからも初心を忘れず、みなさんにいっそう楽しんでいただけるよう精進いたします。